幼き日

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「……ねぇ母様?」 「何です?」 「父様は…いつ来て下さるの?」   彼女の父親は忍ではなかった。 彼女の父親は、戸澤藩の侍だった。名を篠山文四郎[ササヤマ ブンシロウ]といい、藩の剣術指南役を任される程、強い男だった。   「‥さぁ…?」 「父様に会いたいなぁ…」   彼女の父親は、なかなか彼女に会いに来てはくれなかった。   「お館さま…」 「…なんじゃ?」 「話が、あるのですが…」 「あの男のことか?」 「はぃ…千が会いたがっているんです…」 「文四郎さまは、我らとは生きる世が違うお人。お芳[ヨシ]、お前は分かっておろう?」 「お苑[ソノ]…」
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