幼き日

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頭を撫でられていた彼女は、急に何かに反応し、辺りを見渡した。   「千?どうしたんだ?」 「誰かの泣き声が聞こえる…」   父親は耳を澄ませた。しかし、その耳に泣き声は伝わってこなかった。 彼女はまるで導かれるように、山の中へと歩いていった。   「…ヒック……ヒック……」 ガサガサッ― 「…どうしたの?」 「∑ッ?!」 「どうして泣いてるの?」 「…これは……」 「父様…」 「千、よくこの子がいるってわかったな」 「だって泣き声が聞こえたもん」 「…名は何と言うのだ?」 「……祥[ショウ]…」   これが彼女と祥の出会いだった。祥は口減らしの為、山に捨てられたのだった。
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