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ドアの隙間からは邪悪な力が漏れ出ている。
完全に閉じているつもりでも、その中に魔王がいることは歴然だった。
「皆、準備はいいか?」
俺は振り返り、仲間に声をかける。
神妙な顔で3人の仲間は頷いた。
俺も頷き、深呼吸をする。
そして、力いっぱいドアを蹴った。
「ついに追い詰めたぞ、魔王!」
とるものとりあえず大きな声で威嚇する。はたしてそこに、魔王は居た。
「グルルルルル」
返事とも唸りとも取れる重苦しい声をあげ、-体長10メートルはあろうかというドラゴン-その魔王の首がゆっくりとこちらを向いた。
初めて対面した時は酷く大きく感じたが、今は幾分小さく見える。
邪悪なオーラが弱まっているせいか、それとも単純に見慣れたからか。
とはいえ実際に魔王はかなり傷付いている。左目は塞がれ血を流し、両翼は所々失われていて、背中の硬いウロコもボロボロだった。
「覚悟しろ」
後ろで「戦士」の亮介が叫んだ。
「僧侶」の裕子と「魔法使い」の由美は、早くも呪文の詠唱を始めている。
これが最後の戦いだ。
そう自分に言い聞かせる。
俺は腰から木刀を抜き、構えた。するとそれはみるみる内に輝きを放ち、ただの木の塊は白い両刃剣の形を成す。
これが、俺の家系に代々受け継がれる特殊能力だった。本来ならば伝説の剣などが代々家宝になるのかもしれないが、何代前かの先祖が「形あるものいつかは滅す。如何な名刀といえど、刀は血を吸えば次第に綻び、錆びて斬れなくなる」と悟り、この能力を磨いたそうだ。
その為物質的な剣(モノ)ではなく、能力が引き継がれている。
そして、併せて「勇者」という称号も伝わっていた。
いつ頃から拝命したのかは定かではないが、少なくとも俺の曽祖父にあたる人が一番最近では勇者たる活躍をした。
本来ならば世界をも巻き込む筈だった凶事。それを関東大震災レヴェルに収めることが出来たのは曽祖父のおかげだと、祖母に聞かされた覚えがある。自分にとっては関東大震災はとんでもない災害だと思うし、それ以上のことなど想像がつかなかった。関東大震災は曽祖父が魔王のもとに辿り着くより前に、魔王が闇の力を手に入れてしまったが為に起こったらしい。
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