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闇の力と魔王の身体がシンクロする過程の余波で、あの震災が発生したんだとか。
それほどまでの力を持った魔王を、曽祖父はどうやって封印したのかは謎に包まれている。訊こうにも曽祖父は既に亡くなっているし、曽祖父に年の近い身内で細部を語れる人はいない。
その日の何時にご飯を食べたのかも覚えていない祖父母にそれを求めるのは、ある意味酷というものだ。当時の記録も関東大震災に全て持っていかれているようで、殆ど全くと言っていいほど残っていなかった。
曽祖父自身も筆まめではなかったようで、日記や自叙伝などの存在も聞いてはいない。
ただ、曽祖父は亡くなる直前にお腹の中に居た俺を母の腹越しに愛でながら、「次の男児は、明確に儂の意志を継ぐ」と言い残し、逝ったそうだ。
それが合図だったかのように母は苦しみ始め、間も無く俺は生まれたんだとか。
名前は、母が俺を腹に宿した直後に曽祖父が独断で決めていた。
「英雄」
普通なら「ひでお」と読ませるところだが、そのまま「えいゆう」である。おかげで俺は多少難儀な少年・学生時代を過ごすことにはなったが。
名前は兎も角として、俺の潜在能力は身内全てを驚かせるに足るものだったというのは、義務教育終了後に聞かされた。自分は覚えていないが、赤子の頃から何かを握り締めるとそれが仄白く光っていたらしい。スプーンでも、積み木でも。
自分ではっきり気付いたのは小学生の頃だった。それまでも持ち物が光ることには気付いていたが、あれは4年生から習い始めた剣道の試合の最中のこと。
構えた竹刀が朧気ながらも真剣の形を成し始めた時には心底動揺した。結局その試合は負けてしまったが、帰宅後両親を問い質してようやくその事実を知った。
いきなりそんな話をされたとしたら例え子供だとしても素直に信じていた自信は無いが、俺はその話を聞いて逆に安心すらした。実際自分の目にしたものと照らし合わせると、すんなり合点がいく。
以来、俺はその能力を磨くことにした。
日常生活では力の増幅に努め、剣道では剣術を学びつつ、能力を要所要所で使い分けられるように鍛錬した。
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