3118人が本棚に入れています
本棚に追加
/283ページ
「そういうことで」
「あぁ。有り難う、源さん」
井上が出て行った襖を見つめた後、土方は机へ向き直った。
無造作に当番表をめくり、溜め息をつく。
「昨日も異常なし…か」
本来ならば喜ぶべきことだが、今は違う。
近頃辻斬りが横行しているのだ。
だが奴等は神出鬼没。
それに、何故か新撰組の居ない所、居ない時間にばかり現れる。
なかなか捕まえられない。
新撰組の情報を横流ししている輩が居るのではないだろうか。
そうは思っても、横流ししていると思しき輩は屯所内には見当たらない。
このままでは新撰組の面目が立たない。
最近の土方の悩みの種である。
「今日の巡察は一番隊か。…また新八っつあんに頼もう」
そのとき、襖が開かれた。
最初のコメントを投稿しよう!