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現在、心と京は自分たちの部屋を掃除中だ。
寒くて手がかじかんでしまう。
刺すような水の痛みだが、我慢出来る。
隊士たちはいつも感謝してくれるのだ。
ただの女中、とは扱わず、まるで家族のように。
両親の居ない心は嬉しかった。
もっとも、失ったのは彼らの仲間の誰かのせいなのだが。
心が机の下を掃除しようと覗いたとき、耳元で音がした。
それは、折り畳まれた小さな紙だった。
首を捻りながら開けてみて…
「ああっ!!」
思わず叫んでしまった。
「心ちゃん!?」
驚いている京に、心も驚いた顔を向けた。
心の紙を持つ手は震えている。
「友達との約束…忘れてました!」
焦っている心を宥め、京は言った。
「今からその友達のとこに行きぃ!掃除はやっとくし、土方さんにも言うとくから」
「ありがとうございます!」
心は返事をすると同時に走って行った。
「お、心どないしたん?」
「こんにちは。丞さん、酒井さん」
廊下で、心は山崎と酒井兵庫に会った。
酒井兵庫は会計方の隊士である。
酒井と山崎丞は同じ大阪出身だからか、仲が良い。
二人が一緒に居るのは、京と山崎が一緒に居るのと同じぐらい見掛ける。
心は二人に挨拶をすると、足早に街へと出ていった。
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