第一章 再会

3/32
3118人が本棚に入れています
本棚に追加
/283ページ
小さな紙を眺めながら町を歩いて行く。 【バタバタしててすっかり忘れてた…。もう帰っちゃったかなぁ?】 紙を眺め、溜め息をついた。 着いたのは一軒の宿。 何度も紙を読み直し、女将に声をかけた。 「高山晋太郎さんはどの部屋にお泊まりですか?」 「お二階の突き当たりで御座います」 手で二階を示し、女将は微笑んだ。 ゆっくりと二階へ上がる。 【簡単な偽名だなぁ…晋兄】 心は笑みをこぼした。 高杉に紙を貰って約半年。 全く訪ねなかった自分を怒っているだろうか? その不安よりも、もうすぐで会えるという喜びが大きかった。 襖の前に立った。 高鳴る胸を抑え、声をかける。 「晋兄。心です」 「入りな」 襖を開けた。 高杉は笑顔で心を迎えた。 「よぉ。久し振りだな、心」 心の表情が輝いた。 余りの嬉しさに、自分の背後の存在に気付かなかった。 「しんに」 「心ちゃぁーんっ!!」 心の言葉は、その背後の存在に遮られた。 後ろから抱き締められている。 身動きができないため、顔は見えない。 声しか聞いていない。 しかし誰なのかははっきりと分かる。 「と、稔兄…離して」 なんとか、それだけ言えた。image=356810110.jpg
/283ページ

最初のコメントを投稿しよう!