#0 prologue

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ある、よく晴れた日曜日。 砂川京子は、ついさっき脱水を終えた白い洗濯機から、微かに湿った洗濯物を引っ張り出す。 以前使っていた洗濯機は、洗っていた洗濯物が中で絡まりやすく、やや短気な京子はよくやきもきしていたが、 先々月に買い換えたこの洗濯機は、中の洗濯物が絡まりにくい様に作られていて、短気な京子でも苛々することが無くなった。 毎回毎回、現代機器って素晴らしい、と、京子は思う。 基本的に単純なタイプなのだ。 ほんのりと石鹸の香りがする洗濯物を、白い籠に移すと、脱衣所のドアを足で押し開け(母親が見たら、行儀が悪いと叱られただろう)、廊下へ出る。 数メートルの廊下の先にはリビングが有って、そのまた先には、大きな硝子窓。ベランダへの入口。 其処で京子は、伸びを、ひとつ。 「いー天気だなぁ……」 目が醒める程に鮮やかな青空が、其処から覗いていた。
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