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挨拶をしてしまってからふと我に帰った京子は、きり、と眉を吊り上げ、視線を空にやりつつ煙草のフィルターを咥えて深く息を吸い込んでいる須々木を睨んだ。
煙草のヤニの臭いが、辺りに漂っている。
「だから、ベランダで煙草吸わないで下さいってば」
少しむくれた様な声色でそう告げると、再びその三白眼気味の大きな眼を京子に向け、酷く真面目な声色で告げた。
「だから、部屋が煙草臭くなるから嫌ですって言ったでしょ」
喧嘩売ってんのか!
京子は、自分の口元が、微かに痙攣しているのを感じた。
その間も須々木は、紙のフィルターを咥えた満足そうな顔で、深呼吸と共にニコチンを摂取している。
肺癌になって死ね!なんて叫びそうな強気な友人が思い浮かんで、京子は、顔を引き締めた。
言い込めてやる、と、妙な気合いを入れて。
「じゃあ、吸わなければいいじゃないですか」
「ニコチンが切れたら死んじゃいます」
言い返された。
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