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「リセッシュ貸してあげようか?」
「わーいありがとうございますー…って違う!」
……伝わってなかった。
「ノリツッコミ寒いね」
おまけに、侮辱された。
今にも腑が煮えくり返るどころか破裂しそうな怒りを覚えた京子は、その両手を拳の形に握り、叫んだ。
「ゆ、許せない! 親しくもないあなたにこんな屈辱を与えられるなんて!」
「ごめんごめん。かっこわらい」
「口で言うな!」
こいつは完璧に、わたしに喧嘩を売っている。
そう判断した京子は、もうこれ以上こうやって話していても意味が無いと判断し、くるりと部屋へ踵を返した。
怒ったり興奮するとすぐに頭に血が上る京子の顔は、真っ赤に染まっていた。
一人で再び煙草のフィルターを咥えて空を眺めているであろう須々木をベランダに残し、京子は部屋へ戻ると、ぴしゃりと派手な音を立てて、ベランダと部屋を繋ぐ硝子戸を閉めた。
未だ干されていない、洗濯物を残して。
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