第一章

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スッキリした。 春の陽射しがさしこむガラスの向こうは、まだ少し雪が積もっていた。 私は弟からテレビへと視線を戻し、ぼんやりと箱の中の空間を眺める。 視界の隅に、弟の心配そうな顔が写るが、全て気のせい。関係ない。 テレビの音声は私の耳に入っても、雑音としか理解できなかった。 私は、この頃から毎日をなんとなく過ごすようになり、全てに興味を失った。 生きることがよく分からない、とか、そんな難しい理由じゃない。 一日一日を過ごすのがダルく、めんどくさくなった。ただ、それだけだ。 ただそれだけで、私には十分な理由になった。
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