Chapter1

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基本的には勝手に騒いで帰るだけだが、それでもとりあえずは僕の容態を気にしてくれているみたいなので、一応嬉しい。 ……冷蔵庫に入りきらないくらい、大量のプリンやコーラを持ってこられるのは、こちらとしても非常に困るのだが。 それと、これは血世茄に尋ねて判ったのだが、彼女の治癒能力である『紅き生命の源』は、怪我をした直後でないと使用できないらしい。 何でも“その時点での状態”を“数分前の最も健康な状態”まで再生させる……とか説明していた気がする。 いまいち理解できなかったが、簡単に言うなら、時間の経ちすぎた怪我や、病気はおろか風邪すらも治せない、あくまで“戦闘中の治癒”、要するに僕に対しては何の効果も齎さないとのコト。 激しく他人に優しくない能力である。 結果的に助かったのだから、文句を言うつもりは微塵もないけれど。 問題があるとすれば、僕の姉貴だった。 もう言わずとも解ると思うが、あのブラコン女の目の前に、最愛(?)の弟が背中穴だらけにして現れた日には、当然のようにバーサーカーモードが覚醒する。 僕が運ばれてきた時、その日姉貴は運悪く夜勤で、僕の状態を耳にした瞬間、待合室の長いソファを半狂乱で振り回し始め、無茶苦茶に暴れているところを、警備員二十人総掛かりで、ようやく鎮圧させたとかなんとか。 ああ、だからロビーの壁に凹んだような跡があったのかな。 そんな感じで、誰も彼もが一騒動あったわけだが、一先ず今は落ち着いている。 聾申さんたちの一件以来、光喰らいや『影』が現れることもなく、今日も僕は、それなりに騒がしくも平穏な入院生活を送っているのだった。
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