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「でね、それでね、その看護師さんがね、みかんの点滴、中身まちがえちゃったの!だからみかん、おぇーって、気持ち悪くなっちゃったの!」
「それヤバくありません!?っていうか蜜柑ちゃん大丈夫!?」
「えへへー…ちょっと腕が紫色になっちゃったの。だけど、もう平気なの!」
「全然平気じゃないから!どんな未知の化学反応が発動したのさ!?」
「たすく兄ちゃん、病院ではおっきい声だしちゃダメなの」
『これが突っ込まずにいられるかー!』と、一応ココロの中で叫ぶ僕。
此処は、自分の病室のあるB棟三階の階段。
隣にいる小さな女の子の手を引いて、慎重に階段を上っている最中である。
勘違いしてもらっては困るが、無論、最近流行りの幼女誘拐とかではないので、あしからず。
「ね、みかん、そろそろお部屋に帰りたいの。いっぱい歩いたから疲れたの」
薄いピンクのパジャマを着た少女が、腰まで伸ばした黒髪を揺らしながら、早く早くとせがんでくる。
高確率で、語尾に『の』がつく喋り方のこのコは、秋山蜜柑(あきやま みかん)。
僕と同じく、この病院の入院患者で、同室でもある、七才の可愛らしい女の子だ。
「それじゃ、あと五分くらい歩いたら戻ろっか」
「むぅ……たすく兄ちゃんはワガママなの。だったらおんぶして欲しいの」
「いや、それしたら散歩の意味ないでしょ…」
身長は血世茄よりも低く、百二十センチもないだろう。
体型もすごく小柄で、一度だっこしてあげた時も、細腕の僕が余裕でジャイアントスイングできてしまいそうなくらい軽かった。
…いや、もちろんしようなんて思いませんでしたからね?念のため。
成長すれば、かなりの美人さんになるであろう整った顔立ち。長い黒髪は、サラサラのストレート。
とてもじゃないが、ロリコンのオヤジには危険過ぎて見せられない。
まあそんな風に愛らしい蜜柑ちゃんだが、散歩中に階段から落ちて怪我でもしたら大変……ということで、同室で仲の良かった僕と、一緒に散歩するのが、いつからか日課になっていた。
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