Chapter1

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「だけど、ホント不思議だよなぁ…」 オレンジジュースを欲しがる蜜柑ちゃんを、自販機の前から無理やり引き剥がし、誰に言うでもなくそっと呟く。 自分の体を見下ろす。 ルネ先生に言われた通り、確かに傷跡は残るかもしれない。 だが、それでも僕は、何の問題もなく、今まで通り生きているのだ。 銃弾六発、しかも全弾クリティカルヒットというオプション付き。 そんな攻撃を浴びて生き残るなど、映画の中でも極めて稀だ。 我ながら、いったいどんなゴキブリ並の生命力を秘めているのだろうと、本気で疑いたくなる。 つい一ヶ月前に、生死の境目をさ迷っていただなんて、とてもじゃないが信じられない。 もしや僕の体内には、何か隠された力が眠っているとか? いや……漫画のキャラクターじゃあるまいし、それはないだろう。 医者たちも医学的に有り得ない現象だとか騒いでいたし、今更ながら、少しばかり気になってきた。 「…たすく兄ちゃん?具合、悪いの?」 「へ?」 見ると、今まで騒がしかった蜜柑ちゃんが、心配そうに僕を見上げている。 どうやら、僕は相当真剣な顔をしていたらしい。 「ううん、ゴメン、何でもないんだ。ほら、そろそろ帰ろ?」 「…?うん?」 『blood』のバイトで習得した営業スマイルを浮かべ、強引に明るい空気に持っていく。 そうだ、助かったのだから別にどうでもいいじゃないか。 深く考えるのは止めよう、入院中のネガティブ思考はよくないらしいし。ツッコミはなしだ、うん。 頭上に?マークを出現させている蜜柑ちゃんの手を引き、僕は真っ白な廊下を歩き出した。 天井と左右の壁がガラス張りになった(無論強化ガラス)、B棟への連絡橋まで戻り、渡る。 僕らの病室は、四階の一番端なので、この橋を渡った先にある階段を上がれば、すぐに見えるのだ。 だから――――― 「あああああああああああっ!!!」 ―――なんて叫び声が、その階段を上っているときに聞こえてきた日には、僕らの病室でいったい何が起きたのかが、一発で分かる。 「「…………」」 僕と蜜柑ちゃんは顔を見合わせ、変態的な奇声を上げる主の許へ、駆け足で向かうことにした。
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