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妹は生まれつき心臓が悪くて、消毒液の匂いが漂う白いベッドの上で、ずっと辛い入院生活を送っていた。
毎日たくさんの薬を飲まされ、点滴を打たれた。
まるで、籠の中から飛び立つ事を禁じられた、哀れな鳥みたいな日々を過ごしながら。
それでも、いつか自由に飛び立てる日を信じて、妹は無邪気に微笑んでいた。
そんな小さな妹に、僕は絶対に守ってやるって、約束したんだ。
そう、誓ったんだ。
大きくなったら、僕のお嫁さんになるんだって、妹はよく言っていた。
それは無理だよって教えてあげたら、「とっても美人なお姉さんになるもん」と頬を膨らませて、僕やお母さんを笑わせてくれた。
お外に出られるようになったら、一緒に遊園地へ行こうねって、指きりをした。
だから、絶対に治らないって聞いていた病気が治った時、妹は本当に嬉しそうだったし、僕もやっぱり嬉しかった。
学校に行ったら、友達はできるかな、虐められないかなって、すごく心配そうだった。
それならお兄ちゃんが、悪いいじめっ子から守ってやるって、僕は言ってあげた。
妹は嬉しそうに笑った。
僕も笑った。
退院の日がやって来た。
おっきなケーキを買ってきて、家族みんな揃ってお祝いするのを、僕たちはとても楽しみにしていた。
タクシーに乗って、早く家に帰ろうよって、妹は無邪気はしゃいでた。
なのに、
なのに、どうして―――
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