Chapter1

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ツンツンに尖らせた短髪は、冗談のように深い藍色に染まり、若々しさを感じさせる顔には、薄い茶色のサングラス。 派手なドクロのTシャツに黒の革パン、黒の革ジャンを羽織り、首からは金色の鎖をぶら下げていた。 まるでどこかのライブ会場から、そのまま抜け出してきたかのような風貌。 しかし、その肉体は、服の上からでも、無駄な筋肉のない、バランスの取れたものであることが窺える。 そして男の手の中にあるのは、ギターなどではなく、鉄球の繋がれた鎖だった。 コンクリートにめり込んだ鉄球。地面の破損具合から判断して、その重さは優に300㎏を越えている。 それを――― 「っ、らぁ!!」 青髪の男は、鎖を使って軽々引き寄せると、手首のスナップだけを利用し、自身の頭上を中心に振り回し始めた。 獣のように唸る風切り音。 長い鎖と重い鉄球が、凄まじい速度のために残像を描く。 「サッサと……くたばれっ!!」 苛立たしげな咆哮と共に放たれる、必殺の一撃。 見事、地面に着地した人影に向かう黒い魔弾が、視認できるかどうかすら危ういほどの勢いで襲い掛かる。 しかし―――鉄球の進行方向にいる、細いシルエットは、落ち着いた様子でその軌道を見切り、間一髪のタイミングで回避した。 だが、攻撃はそれで終わりではない。 青髪の男は、すかさず手元の鎖を動かし、更なる追撃を叩き込む。 己が得物を巧みに操り、目まぐるしい猛攻を繰り出していく。 大気を揺るがす轟音、巻き上がる粉塵。 絶え間なく繰り出される鉄球の連撃。 その一つ一つが、標的を的確に追い詰めていく。 重さ300㎏以上の武器を自在に操るその筋力と手さばきは、最早人間の成せる業ではなかった。 当然である。 青髪の男は人間などではない。 とある目的のため、異世界“シティ”からやってきた、狩人という戦闘種族なのだから。
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