Chapter1

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見ての通り『黒き真珠の贈り物』は、この鎖付きの鉄球を創製する能力である。 強靭な鋼の鎖は、5メートルから100メートルの長さを自在に調整できる伸縮機能を備えており、先端の鉄球の重さは、350キロという超重量の武器。 先ほどの戦闘のように、中距離戦、遠距離戦に特化した能力だ。 対する敵の能力は、未だ謎に包まれているものの、こちらの攻撃による対処から考えるならば、やはりあの長槍による接近戦が奴の本領と言えるのだろう。 だが――― 「悪ぃが……そうはさせねぇんだよ、なぁ!!」 気合一閃。 鎖をしならせ、再び光喰らいに向けて鉄球を叩きつける。 直線に凄まじい速度で飛来したその弾丸を、奴は事も無げに回避した。 が、その程度の行動は、既に予測の範疇である。 鉄球が地面を砕き、耳を擘く轟音と共に、黒いコンクリートの破片が四方八方に拡散する。 構わず鎖を操り、鉄球の軌道、速度を次々に変化させながら、荒れ狂う弾丸の嵐を繰り出していく。 先ほどの猛攻を遥かに凌駕するその連撃を、しかし奴は、紙一重のタイミングで躱していく。 その動きに、隙を見て反撃に移ろうなどという意思は感じられない。 あれだけの技量があれば、鉄球の嵐を潜り抜け、無理やり接近戦に持ち込むことが、可能であるにも拘わらず。 それもその筈。 何故なら、奴が狩人の周囲に近づいた瞬間、もう一つの能力により、奴を捕らえる事が可能だからだ。 そして、奴もそれを熟知しているが故に、接近することもできず、かと言って無防備に背を向けることも赦されず、回避運動を続けねばならない。 たとえ己のスタミナが、みるみるうちに削られていこうとも。 詰まるところ、これは奴からすれば、初めから全く勝ち目のない戦い。 接近すれば捕らわれ、距離をとれば、いずれは鉄球の餌食となる、絶対的な相性の問題。 奴にとってこの青髪の狩人という存在は、真っ向にやり合えば勝利することのできない、言わば天敵なのだ。
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