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華麗にチェックメイト宣言。
決まった。
これは決まった。
確実に決まった。
文句なしにイケたセリフである。
ヒーローってのは、やはりカッコイい決めゼリフが必須条件であることを、彼は改めて自覚する。
最後の一撃を投擲するべく、青髪の狩人は鎖を握る手に力を込め――――
「―――ってオイ、マジか!?」
驚愕する。
視界の端、コンクリートの砕かれた歩道。
そこに、人間の女性らしき人影が、こちらを見て呆然と立ち尽くしているのが映った。
…そして、同じく彼女を見つけたあの光喰らいが、次にどのような行動に移るのかを、瞬時に理解する。
「チィっ!!」
反射的に鎖を操作し進路を変更、女性の方へ鉄球を放り投げる。
予測通り、奴は手の中の得物を、同じように女性へ投擲していた。
鋭い金属音と共に、火花が散る。
黒い鉄球が、女性を貫かんとする鋭い長槍を、すんでのところで弾き飛ばしたのだ。
まさに危機一髪である。
「本っっっ当にクソ野郎だな‥テメェ」
憤怒と軽蔑の眼差しを向けた先には、しかし、既にその光喰らいの姿はなく、橋の遥か向こう側から、遠ざかっていく靴音が辛うじて聞こえてくるだけだった。
「………クソったれ…どこまでイケてねぇんだよ……」
またしても、まんまと逃げられてしまった。
気絶してしまったらしい女性に駆け寄りながら、忌々しい光喰らいへ悪態をつく。
ああすれば、自分が確実に人間を庇う事を計算していたのだ。
どこまでも腹立たしい奴だった。
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