Chapter2

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▼ 「生きてる!?祐、今日もちゃん新しい朝を迎えられてる!?」 ベッドの中で微睡んでいた僕は、けたたましい女性の声によって、強制的に覚醒させられた。 周囲を覆っていたカーテンが、勢い良く開け放たれる。 窓から差し込む朝日がとても眩しい。 「お姉ちゃんナースの、レッツ☆検温の時間だよー♪ほら、起きた起きた!!」 無情にも引き派がされていく僕の布団。 頼むから、あと五分………なんてお願いは、この暴君の前には通じない。 現実とは非情なのである。 寝癖でボサボサになった髪を撫でつつ、僕から安眠という名の幸福を奪った、非道なる人物へ顔を向ける。 ベッド脇には、純白のナース服に身を包んだ中学生………、ヘタをすれば小学生に見間違えそうなくらい小柄な女の子が、体温計片手にハイテンションだった。 念のために言っておくが、断じて彼女はコスプレイヤーなどではない。 この病院に看護師として勤める、小沢夕日二十一才(←嘘じゃない)、正真正銘僕の義姉である。 「ハイ、体温計挟んで!あ、一人でもできる?無理だったらお姉ちゃんが服を脱がして……」 「できるから!一人でできるから!!」次元を三つくらい飛び越える勢いで過保護な義姉の手から体温計を奪い取り、脇に挟む。 枕元のデジタル時計に目をやれば、時刻は『6:30』、病院の朝は、騒がしい義姉の来訪……もとい定期検温から始まるのだ。 「たすく兄ちゃん、おはようなの!」 可愛らしい元気な声。 見ると、向かいのベッドに座った蜜柑ちゃんが、同じように体温を計りつつ、にこやかに手を振っていた。 黒いサラサラのロングヘアーは、寝起きだというのに、全く寝癖がついていなかった。 正直、羨ましい。
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