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「おはよ、蜜柑ちゃん」
僕は同じように挨拶を返しながら、『若モノは元気だねぇ』と、内心でジジくさいコメントを述べてみたりする。
体温計のアラームが鳴る。
確認すると表示は『36.4』、これ以上ないくらいの平熱だ。
体温計を返すと、姉貴は僕の顔色を何度も何度も見比べたあと、慎重オーラを大量放出しながら、僕の状態を手元のカルテに書き込んでいった。
軽くため息。
心配してくれるのはありがたいが、いい加減この過保護さは何とかしてもらいたい。
「よし!じゃあ次は、男の子の生理現象のチェックを……」
「すんなよ!?ていうか、いくら姉弟だからってセクハラだよ、それは!」
「何言ってるの!これも立派な健康管理の一つなのよ!?どうしても見せられないなら、今の祐の“オトコノコ”の状態を口にしてみなさい、さあ早く!」
「できるかぁ!!緊急用のナースコール押しますよお姉サマ!?」
股間に迫って来た姉貴の両手を、間一髪のところで払いのけ、ベッド脇の四角いボタンへ手を伸ばす。
このままではリアルで危険だ。
「ナースは此処にいるでしょう?……それに、朝の生理現象が起きるのは、健康な証拠なんだよ?もし、祐がヘタレなインポ野郎だって判明したら……お姉ちゃん、本当に泣くからね!?」
「いいから帰れ!さっさと他の病室の検温に行ってきなさい!」
入院してからというものの、毎朝こんなやり取りを繰り返しているのは、多分気のせいではない。
『祐が反抗期になっちゃったぁ~(泣)』と、子どもみたいに嘆く姉貴を、無理やり病室から追い出し、もう一度ため息。
朝から疲労モード全開である。
全く……ホントに勘弁して欲しい。
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