Chapter2

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姉貴と護さんを会わせてはならない。 過保護スキルを極めすぎた者同士、妙に意気投合してしまうに違いない。 そうなれば暴走状態に陥るコトは確定、完全に手のつけようがなくなってしまうだろう。リアルで病院が滅ぶ。 恐ろしい想像に身震いしながら、窓際まで戻る。 向かい側のベッドを見ると、蜜柑ちゃんは一生懸命にミカンの皮を剥いているところだった。 「これから朝ごはんなのに……ホントにミカン好きなんだね…」 「そうなの、みかんはミカンが大好きなの!」 剥いた皮をゴミ箱にボロボロと捨てながら、嬉しそうに微笑む蜜柑ちゃん。 ミカン汁がシーツに飛び散っているのだが、純粋無垢な笑顔を壊したくないので、大人しく黙っていることにしよう。 彼女の言葉を証明するように、備え付けの冷蔵庫の上には、網目のバスケットが置かれ、山積みのミカンが入っていた。 そう、ダジャレなのではなく、蜜柑ちゃんはミカンが大好物なのである。 食事前だろうが就寝前だろうが、気づけば手にはミカンがあり、口をモグモグさせているのだ。 美鈴が“プリンクイーン”ならば、蜜柑ちゃんには“ミカンマスター”の称号を授与しよう。 因みにいつも手が黄色いのは、絶対に僕の見間違いではない。 「小さい頃から、いつもまもる兄ちゃんが持ってきてくれて、みかんにミカンを剥いてくれたの。だから、ずっと大好きだったの!」 ミカン大好き宣言。 蜜柑ちゃんの好感度が、護さんより果物の方が勝っていると判明した瞬間だった。 ふはは、哀れなり護さん。 僕は心の底から、変態スーツへ嘲りの爆笑を向けようとして……そこで、蜜柑ちゃんの言葉に、引っかかりを覚えた。 小さい頃から、いつも護さんが持ってきていた……? 昨晩感じていた疑問が蘇る。 昨日は、美鈴のプリン騒動で忘れてしまっていた、あのとき不思議に思っていたこと。 「そういえば蜜柑ちゃんて、お父さんとお母さんはどうしたの?」
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