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そう、世の中は複雑なんだよ蜜柑ちゃん。
正直者に福はないし、人は見かけによらないし。
それに………キミのコトを一番に考えてくれている護さんには、元気になったキミと二人きりの時間を、思う存分楽しんで欲しいし、ね…。
「うん、だから初めての観覧車は、護さんと一緒に乗りなよ、絶対連れて行ってくれるからさ!ですよね、護さん?」
最終確認のため、先ほどからずっと黙りっぱなしの護さんへ僕は振り返り―――、
「え…?」
その、恐ろしい形相に、息を呑んだ。
護さんは、向かい側のベッドに腰掛けながら、僕と蜜柑ちゃんが観ていたテレビを、穴が空きそうなくらい、ジッと凝視していた。
テレビの画面には、やはり先ほどの観覧車が映っている。
彼の、普段の変態的なオーラは完全に消え失せ、代わりに酷く真剣な表情を浮かべている。
……怖いほどに。
背筋が凍りつき、皮膚が粟立つ。
それ程までに、眉間に厳しく皺を寄せた護さんは、いつもの彼からは考えられないほどの迫力があった。
「ああ……今度は嘘じゃない。約束は必ず守る…。ぼくが…必ず……」
地の底から響くような、低い声。
驚愕する僕を余所に、護さんは何かを呟き始めた。
蜜柑ちゃんは、テレビを観るのに夢中で気づいていないみたいだ。
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