490人が本棚に入れています
本棚に追加
「必ず、遊園地へ連れて行ってやる……観覧車にだって乗せてやる。ぼくはもう、嘘はつかない」
それは、誰かに話しかけるというより、むしろ、自分自身に言い聞かせているようだった。
僕は、彼のただならぬ雰囲気に気圧され、黙ったまま耳を傾けることしかできない。
「あのときは助けられなかった…約束を守れなかった…。だけど、ぼくはもう二度と約束を破ったりしない。今度こそ、絶対に守り抜いてやる…。そして必ず、遊園地へ行くんだ………必ず…必ず……」
「……まもる、兄ちゃん?」
ふと、いつの間にかこちらを見ていた蜜柑ちゃんが、キョトンとした表情で、不思議そうに、護さんに声をかけた。
途端、思い詰めたように何かを呟いていた護さんが、ハッとしたように顔を上げた。
「…ん?どうかしたかい、蜜柑?」
が、それも一瞬。
そこには、いつもと何ら変わりない表情があった。
先ほどの光景は見間違いだったのではないか…そう思えるくらいに。
蜜柑ちゃんもそう感じたのだろう、軽く小首を傾げただけで、何でもないの、と呟くと、テレビへ視線を戻してしまった。
僕も彼女と同じように、今見た護さんの表情を気のせいにしようと、何となく窓の外を眺めてみる。
だが、僕の心臓は、肋骨を叩き折らんばかりに、バクバクと激しい鼓動を繰り返し、先ほどの光景が見間違いなどではなく、紛れもない事実であることを証拠づけていた。
最初のコメントを投稿しよう!