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白いベッドの上。
ぼくと妹は、二人で一緒に座って、テレビを観ています。
テレビには、大きな観覧車が映っていました。
この前オープンした、新しい遊園地について、やっているのです。
ゆっくり、ゆっくり回る、とても大きな観覧車。
「×××お兄ちゃん、あれ、なぁに?」
妹は不思議そうに、ぼくに訊いてきました。
生まれてから、ずっとずっと、何もない病室で暮らしていた妹。
当然、観覧車なんて知らないのです。
だから、ぼくは観覧車について、やさしく教えてあげました。
説明が終わると、妹は少しびっくりして、それからもう一度、テレビを見ました。
つられてぼくも見ると、今度は観覧車に乗った家族が、映っていました。
こちらへ向かって、楽しそうに手を振っています。
「……あたしも、ゆうえんち、行きたい」
ふと、妹はそんなことを言いました。
その家族が、羨ましかったのかもしれません。
自分は行くことができないから……、そう、思ったのでしょう。
妹の横顔は、ちょっぴり寂しそうでした。
だから、ぼくは言いました。
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