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「ん…生きてるか、祐」
「あ!センパイのほっぺ切れてねぇか!?任せろ、オレがキスして…」
「タスク…この、プリン、……………いい?」
「む、賞味期限はしっかり確認するのだぞ?我も昔、恐ろしい食中毒に…」
かなり適当な心配をする鼻ピアス、意味不明な理由でキスを迫ってくるピンク色の後輩、僕をそっちのけで冷蔵庫を物色する金髪少女と黒髪の幼女…もといババア。
もはや見舞いに来たんだか遊びに来たんだか、多分アインシュタインの頭脳でも解明不能なこの状況。
お願いします神様。
どうかこの正直者に今一度、安息という名の入院生活を与えてくださいませ……。
迫り来る硝霞の顔を押しのけながら、僕は心の底から願った。
……が、白い髭の神様に『ワシには無理じゃ♪』と、にこやかに告げられたような気がした。
脳内で逆立ち歩きを始めた神様を殴り飛ばし、深淵よりも更に深い溜め息を尽きつつ、窓の外をぼんやり眺める僕。
僅かに開けられた隙間からは、湿っぽい土の匂いと、むわむわした湿気が流れ込んできている。
どんよりとグレーの雲に覆われた空からは、ポツリポツリと雨が降り始めていた。
今日の日付は6月22日。
聾申さんたちとの戦い……そして、僕が此処の病院に入院してから、早くも1ヶ月が経過していた。
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