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どうしてあんな無茶な行動に出たのかは、未だに自分でもよく解らない。
ただ、美鈴が危ない、美鈴を守らなきゃ、そんな気持ちが頭に浮かんだ時には、体が勝手に動いていたのだ。
正直者の僕の体は、ヤッパリ正直者だったらしい。
とにかく僕は美鈴を庇い、珈寅の放った銃弾を背に受けた。記憶に残っているのはそこまでだ。
姉貴や医者の人に聞いた話では、美鈴が血まみれの僕を、この病院まで運んできてくれたらしい。
すぐさま手術が行われたが、銃弾は僕の肺やら何やらあちこちに傷を負わせ、しかも貫通せずに体内に残っていたとかで、相当危険な状態だったそうだ。
…いや、他人事みたいな言い方って思うかもしれないけど、僕自身の記憶がないのだから仕方ない。
実際他人の出来事を聞かされていたような感覚だったのだから。
まあそんな感じで色々あった結果、何とか無事に峠を越えたらしい。
医者の人たちは、奇跡だの有り得ないだの医学の法則に反するだの、散々不思議がっていたが、助かったのだから文句は無しにしてもらいたい。
で、とりあえず無事に助かったものの、重傷には変わりなかった僕は、リハビリを兼ねた1ヶ月の入院生活を言い渡されたというわけだ。
初めのうちは大変だった。
ちょっと体を動かすだけで傷口が痛み、歩くどころかまともに寝返りをうつことすらできなかった。
まあ、それは本当に最初だけだったので、一週間もすれば、普通に院内を徘徊して姉貴にどやされる程度にまでは回復していたのだが。
ただ、本来退屈である筈の入院生活は、先ほどの通り、毎日が刺激的というか刺激がありすぎて静寂カムバックみたいな状況になってはいるものの、とりあえず退屈ではなかった。
面会謝絶されるような怪我ではなかったため、美鈴や奈央たちが、毎日のように病室を訪れてくれたのだ。
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