奇妙な感覚

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午前9時ー。 目覚ましの音で目が覚めた。 顔を洗って朝ご飯を食べる。 《今日は何しようかな?》 いつもの癖でテレビを付ける。 特に見たい番組があるわけでもない。 テレビを眺めていると、1人でいる事の淋しさが込み上げてくる。 「おはよう」を言う相手のいない事に違和感を覚える。 距離を置こう。 …そう言って出ていった彼氏。 来年の11月に結婚しよう。 なんて話してたのに・・。 ほんの少しの不安が頭をよぎる。 まさかね。 このままなんて事はないよね。 3ヵ月後、一回り成長したアイツは私にプロポーズしてくれる。 きっと・・そうに違いない。 私達は別れた訳じゃない。 結婚に向けての土台作り。 きっと・・そうに違いない。 私は小さな不安を何の確信もない自信で打ち消そうとした。 でも・・・まさか・・。 私は不安に押し潰されそうで、恐くなった。 ・・・。 ・・・。 ・・・。 私は携帯を開いてモバゲーにアクセスした。 私はユリになりきる事で、不安から目をそらす事にしてしまったのだ。 昨日の書き込みの返事を見た人達が、また書き込みに来ていた。 他愛のない会話の延長戦。 《面倒だな。》 私はそう思いながらも書き込んでくれた人のところへ行き、その返事を書いた。 すべての書き込みに返事をして、今日も大富豪をはじめる。 昨日と同じ、適当な部屋に入ってゲームをはじめる。 初対面の人と昨日と同じように差し障りのない挨拶をする。 私は今日もユリらしく、受け答えを始めた。 「ユリはどこに住んでるの?」 【百科事典】が聞いてくる。 「兵庫県の淡路島ってとこですよ。百科事典さんは?」 同じ質問にも丁寧に答えるユリ。 礼儀正しく、人懐こく、可愛らしい女の子を演じる。 「俺は神戸だよ。近いね。いくつなの?」 「21です♪神戸なんですか☆橋を渡ったらすぐですね☆」 本当は私は奈良に住んでいる。 兵庫県の淡路島と神戸がどれだけ近いのかは正直分からない・・・。 何とかなるかな?
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