0人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
シンはどこから呼び寄せたのか、きれいな色をしたチョウを一羽手にしていた。
「さあ、このチョウの後ろをついていけば君は完全な君になれる」
そして彼は、僕にプレゼントだと言ってクローバーのおまじないを教えてくれた。
どんな願いも叶うというおまじないを。
僕はシンにお礼を言って、先をゆっくりと飛んでいくチョウの後をおいかけた。
一度だけ振り返った。だけど、そこにシンの姿も白い木の影さえもなかった。
ちょっと物悲しい気持ちになった。
どこまでも続く、碧い碧い空と緑の大地。
こんな風景、僕の記憶のどこを探しても見当たらない。
ここは一体どこなのだろう。 そんなことを考えているうちに、チョウがひらひら同じ場所をまわりだした。
そこにあるのは、緑の大地の上にぽつんとひとつだけ不自然にたっている真っ白な扉。
チョウはこの扉の向こうへ行け、と告げているようだった。
僕はチョウにもお礼を言って扉を開けた。
その扉をくぐった瞬間、僕の名前を呼ぶ声がかすかに聞こえはじめてきた。
最初のコメントを投稿しよう!