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重い目を開けると、
そこには真っ白な天井と僕の顔をのぞきこんでいるいくつかの顔があった。
ぼやけていた視界が何もかもはっきりと映し出した時、
その顔が家族のものである事、
自分が病室のベッドの上にいる事に気がついた。
そして自分がどうしてここにいるのかという事も思い出した。
あの日、車道に飛び出して、走ってきた車と… じゃあ、さっきまでの風景は?
シンは?
チョウは?
夢? それでもいいと思った。
シンが僕を目覚めさせてくれたのにはまちがいないのだから。
もしもあの時、
白い木の記憶ではなく、新しい記憶をえらんでいたのなら、
僕はここに戻ってくる事ができなかったのかも知れない。
僕が目を開けた事に泣きながら喜ぶ家族の向こう側に、
あの時僕を導いてくれたきれいな色をしたチョウとシンの姿を見たような気がした。
僕は心の中で何度もありがとうと繰り返し、いつのまにか涙していた。
倉崎 陸、12歳。
これからも生きていこうと、強く決心した。
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