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(…背中が、痛い……)
(このまま眠れたら…)
――ズキンっ!
「う……ッ!!」
意思を失う事も許さない背中の傷。猛烈な風を背に感じながら、シンは目を開けた。
あそこから落ちたのだろうか――いつの間にか現れた、青白い冷たな光を放つ、大きな大きな星。その周りを随分と小さな星が周回している。
まるで星空に包まれるようだ――汚れた日本の空からは決して見えない星々が輝いていた。
(…俺、落ちてるよ…)
(このまま…死ぬのかな)
あるいは、"死ぬ"と自覚していないからか。心は、いっそ不自然なほど穏やかだ。
体勢を変えようと手を伸ばし――それが空中ではバランスを崩すとも知らずに――たちまち風にあおられる。
「ぅわ…!?」
両腕をばたばたさせて、何とか安定させようとするシンの目に飛び込んで来たのは――
「…すげぇ…きれい」
深い緑と闇が混じりあった木々はなだらかに天へ向かい、山を作り出す。ところどころきらりとするのは、あの星の光を借りて輝く川の流れ。谷を越え緩やかに大地を潤し、遠くとおくの海に注ぎ込まれていく。
本でも美しい国を見たが、ここはそれ以上の感動と衝撃を与えてくれた。
そして眼下には――
ごつごつとした岩場が広がっていた。
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