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「ぅわああぁぁあぁぁぁぁ!?」
ようやく自分の立場を理解したらしい。
(死ぬだろこれはぁぁぁ!!)
「助けて!!!」
空中の悲鳴など、誰が聞くだろう。シンは錯乱状態に陥っていた。
「――うるさい」
そんなシンの頭上に、いきなり降ってきた重々しい声。
「先程の冷静さはどうした?」
「ケルオマ!?」
声の持ち主はふわりと、宙を移動してシンをその背に乗せた。助かった事に、深く安堵した。
そう――あの本で見た、漆黒の狼。
しかし彼は"ケルオマ"呼ばわりされた事に、少々ムッとしたようだ。
「私には、ちゃんと名前がある」
「え…ケルオマって名前じゃないのか」
本よりも艶やかに、強い意思を持って燃え盛る瞳の中の炎が一瞬――ゆらり、と揺れた気がした。
「ケルオマとは…
神が悪戯に生み出したもの。機械の体に獣の魂を埋め込んだ、半機半獣の化け物の事だ」
「化け物…」
「私は、レリエスという」
「あ、俺は…――」
「ミナモト シン」
シンの言葉を遮って、くつくつと笑うレリエス。シンのびっくりした顔に、にやにやしている。
「そういえば…俺をあの時助けてくれたの、レリエスだよな!?」
逃げろと言ってくれた声が、今も耳にこびりついている。間違えようがない。
「そうだ」
「どうなってるんだよ!!なんなんだアイツらは!!どうして俺がこんな目に遭うんだ!?」
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