第二幕…激昂、月光、吠えて

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背の上で叫ばれて、レリエスは耳をぴくぴくさせた。彼なりに迷惑がっているようだ。 「…そういうのはな、シン。自分で――」 「レリエス!!あれ!」 「――!!!」 レリエスは耳を前方に集中させた。 空気が、ぴりぴりしている。ぴんと張った緊張の糸が、シンに冷や汗をかかせ、レリエスを唸らせた。 ――ぽちゃん―― 空が、歪む。 真っ赤な滴は空に大きく波紋を作り、人が両腕を伸ばした大きさで安定している。その波紋の中央――そこから、真っ赤な不透明の袋状のものが、大地に向かってどろりと伸びていった。 「何アレ!?気持ち悪ィ」 「もっとキモイのが見れるぞ」 「え"…レリエス、キモいって…」 「――来るぞ!!!」 最初に見えたのは、爪。 長い爪で袋の内側から、袋をゆっくりと裂いていく。大人が通れるくらいの穴があくと、両縁に手をかけ、「それ」は姿を現した。
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