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「よう、シン!昼飯食いに行かないか?」
シンはいきなり、隣りから掛けられた声にびっくりして振り向いた。
学校のチャイムが教室中に鳴り響き、昼休みを告げる。教室はざわついていた。
「え…お、俺と?」
「当たり前じゃん」
同じクラスの、ユタカ…といったか。いつもクラスの中心にいて明るく活発、いい意味で目立つ奴だった。
屈託のない笑みを浮かべる彼とは対照的に、シンは少しだけ沈んだ笑顔をする。
もちろん、昼は一緒にしたい――だが。
「おいユタカ、ンな奴シカトしとけよ」
「こっちまで暗くなるぜ!」
げらげらと馬鹿みたいな笑い声が、シンの笑顔をますます沈ませる。
「お前らなぁ…」
「いいよ、ユタカ。俺行くとこあるし。悪い」
「あ、おい、シン――」
ユタカの声をことごとく遮って、シンは弁当箱と読み掛けの本を片手に、教室を足早に出て行く。
「よう、ユタカ、なんであんな奴構うんだよ」
「ん?いや、クラス委員の義務かなぁっと」
「ぎゃははは!仕事熱心~」
「誰もあんな奴本気で相手にしないだろ。誘って損したかな」
(ユタカ――)
閉めた扉越しに聞こえる、学友達の笑い声。
苦々しい思いを拳にこめ、硬く握り締めて、シンは中庭へと向かった。
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