第一幕…平和な日、平凡な人

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「――…ッ!」 シンは、「目覚めた」。 今度こそリアルに目覚めた事に安堵し、制服のシャツが汗でびっしょり濡れていた事に気付く。 頭が重い…吐き気がする。 とりあえずシャワーを浴び、私服に着替えて、母親の作った朝食を食べる。 学校が休みだからといって、寝過ぎたようだ。時計の針は、10時を指していた。 朝食の皿を流しに置き、自室に戻る。ベッドの上に投げっ放しの本が、昨日の夢を思い出させた。 手に取り、ぱらぱらとめくる。ケルオマは、変わらずそこにいた。悪さを働いた人間を罰するため、吊された罪人に向かって吠えている挿絵。 その挿絵のケルオマは、あの夢のように真っ赤な目をぎらぎらさせて――こちらを、見た。 「…え!?」 (今、目が…!?) ケルオマはさらに、口を動かし―― 『――時は、満ちた』 「――!!」 ばさっ!! 床に落ちた本のページを、風がめくる。 (ケルオマが…動いた…!?) 本を慌てて拾い、急いで閉じると、学生鞄の中に押し込んだ。 こんな本、すぐ返却しよう――そう思って振り向くと―― ベッドの上に、あの本があった。 (入れたはずなのに!) ベッドに上がり、その本を手に取った瞬間。 シンは、意識を手放した。
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