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(消去!?何言ってんだこいつら…これは夢じゃないのか…!?)
「…ヘイ、ボォ~ス。こいつ、起きてるぜェ」
「あらまぁ…本当ねぇ」
二つの靴音が、近付いてくる。せいいっぱい体をよじっても、話している奴らを見る事は出来ない。
「フン…自らの意思で口をきく事も出来んらしいのぉ…」
シンは混乱した。
――これは夢のはずだろ!?やめてくれ…、覚めろ、覚めろ覚めろ…!!
「――消せ」
ふぉんっ…
何かが、振り上げられるのを、風で感じた。
(覚めろ――!!)
グァオォォォォォォォ!!!
『逃げろ、シン!』
空気を叩き付けるような獣の咆哮とともに、シンの体はふっと軽くなり、鎖がかき消えた。
「――何ィッ!?」
しかし振り上げられたものはその勢いを止める事は出来ず、シンの背中を斬り付けた!!
「うわあぁあぁあぁぁ!!」
痛みと突然の自由に、シンは今まであげた事のない悲鳴をあげた。
(痛い…!夢じゃ、ない!!)
前方へ倒れこむ。いや――前へ、落ちる。
「チックショウ!誰だァ!!」
「追え!!捜し出せ!!」
「逃げますよ!?」
(何なんだよ、一体…)
彼らが騒ぎ立てる声は遠のき――シンは、生温い風の中へ落ちていった。
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