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そんな彼の様子に気付いたのでしょうか。老人は目尻により一層皺を寄せて、微笑みこういうのでした。
/ ,'з 「ほほ、そんなに堅くならんでも取って喰いわせんよ」
それを聞いた彼は、ようやく老人の目を下から覗くように見据えることができました。
その皺だらけの顔にある細い二つの目は優しく、透き通るような瞳をしていました。
それを見て彼は思いました。
「人間の目とはなんと綺麗なものなのか」と。
彼が自分以外の誰かと接するのは、自分の家の小さな庭で採れた野菜を市場に売りに行くときだけでした。
その時でさえ彼は人の目を見ることはありません。
唯一見るときといえば、自分の家にある端のひび割れた鏡に映った自分の顔。そこにある二つの目だけでした。
けれどその目は、今この目の前で微笑みを浮かべている老人のそれとは全く違く写ります。
色は濁り、光もなく、まるで何かに怯えているような。
同じものなのに全く別のもの。彼は少し羨ましく思いました。
と、ここまで考えてから、彼はようやく口を開き、老人に問いました。
( ^ω^) 「何か、ご用ですか?」
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