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   それを聞いた老人はもう一度小さく笑います。   / ,'з  「ほほ、暗い顔をした少年が大荷物を担いでどこに行くのか、少し気になりましての」    彼はその問いに、素直に答えていいものか迷いました。    「どこまで行けるか歩いてくる」などと言ったら、この初対面の老人はどう思うのだろうか?   若気の至りと声高らかに笑うだろうか。それとも、頭の弱い変人と思われ、顔をしかめるだろうか。    そう考えると、彼は自分の目的を素直に話すのが気恥ずかしく思えてくるのでした。    だから彼はこう言うことにしました。   ( ^ω^) 「少し……散歩にでもと」    しかし、彼のリュックと一緒に背負われている寝袋を見れば、どんな人間でもそんな軽い用事のために彼が出掛けるのだとは思いません。    老人は、それは彼の軽いジョークなのだと受けとり、笑みを崩さずに言います。   / ,'з  「長い散歩に、なりそうですなあ」    彼は驚きました。  口から出た適当な理由に、どんな反応をするでもなく、それをやさしく包み込むように返してくれた老人に。
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