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髪が燃えたのを見た瞬間、奴の魔法が解け、急にクールな口調から馬鹿っぽい、もとい砕けた感じの口調に変わっていた。
「しかも、今ので毛先が高熱で焼き斬れてたから、多分斬れたとこ痛んでるよなぁ~。はぁ、後で少し切るかぁ。ブツブツブツ――」
まだ小声でブツブツ言っている。
どうやら、こっちが奴の地の様だ。
私はその光景に呆気にとられ、次に呆れながら何故か魔法を解いて奴が落ち着くのを待った。
「―ブツブツ―血走った兵士達に襲われるし―ブツブツ―たくっ、今日は厄日だ―ブツブツ―はっ!」
やっと我に返った奴は、私が見ていたのに気付くと町娘の様に頬を染め、口を尖らせながら私に言った。
「つうか、お前らがこんなとこで戦うからわりぃいんだ。人が寝てたらドタバタと、しかも血走った目ぇして両方から襲ってくるし」
私は心の中で思った。
(今の仕草をちょっとだけ可愛いなとか、こんなとこで寝てるあなたもあなたで襲われても仕方ないとか――。あれ? ……襲われる?)。
私はそこで何か引っ掛かった。
「とっさに胸元チラッと見せたら全員、鼻血ドバドハ流しながら倒れるし……つうか、最近の兵士はウブなんだな。」
そこまで聞いて、引っ掛かっていたものが何かわかった。
「へぇっ?」
……が、私はあまりのことに一瞬、思考停止に陥った。
けれど、すぐに納得すると倒れている兵士の兜を外しその口の少し上に手を止めた。
……確かに息がある。
駆け付けた時は、焦りとこの血の海を見て思い込んでしまい分からなかった。
(っていうか何だこのオチは――)。
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