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真剣な顔で口を開いたと思ったら一変、やる気のない本当に面倒そうな顔をして投遣りにそう言った。
そう。確かに咎人にとって『さらわれた王女の捜索・救出』など、面倒なことに他ならない。
しかし、言われて気付いたが、こいつを巻き込む……いや、その旅に同行すればれば――。
私は他国の地理をあまり知らない。
それに、この者なら腕も私より達し、何度か剣を交え言葉を交しただけだが、悪い奴じゃないしある程度信頼でき頼りになる。
しかも、手配されてから少なくとも数百年は放浪しているはず…
……あら?そういえばこの者の歳はいくつだ?
チラッと顔を見る。
見た目は二十歳過ぎくらい。
耳が少しも尖っていないから、エルフの混血でもない。
……まあ、そんなこと今は気にしないでいいか。
という訳で、私は思案をやめて奴と笑顔で向き合う。
咎人は、何だ?という顔をしている。
しかし、こちらが何を言わんとしているのか勘ずいているようで、その顔は微かに引き攣っている。
私は耳を塞ごうとしている両手を掴んで止めた。
「これから、お前の旅に同行しようと思う。断っても勝手について行くから……そのつもりでな」
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