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そして、黒地に紅い桜吹雪柄の着物を羽織っている点。
「貴様が咎人か。仲間の敵取らしてもらう!」
私は恐怖を覚えながらも奴に剣を向ける。
だが、奴は剣を鞘に納めたまま手に持ち、抜いても構えてもいないのに全く隙がなかった。
そのため私は剣を構えたまま動くことが出来ない。
すると、奴が顔を頭上からこちらに向けた。
横顔も美しかったが、正面から見ると更に美しい。
まさに絶世の美女といえる美貌だった。
「……ほう。その剣、珍しいな。不可視、とまではいかないが、ほぼ透明な刀身の剣か。材質は差詰め錬金術で生成した高純度のダイヤと云ったところか」
「っ!」
奴の言葉に私は表情こそ崩さなかったがかなり焦った。
奴は一目見ただけで、私の愛剣の材質と生成法を看破したのだから。
しかし、私は怯まず地を駆け斬撃を放った。
剣を鞘に納めたまま、構えてもいない奴に向かって。
しかし、その刃が奴に届くことはなかった。
「なっ!」
私は驚いた。
必殺の一閃が奴の首の寸前で剣の柄によって止められたことに。
「……両刃で細く刀身の長さは二尺八寸と云ったところか」
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