田舎

2/4
前へ
/12ページ
次へ
「うっひゃー。随分田舎だなぁ。猪とかいそう。」 揺られるバスの中、誠が窓にへばりつきながら景色を見渡していた。それを見て本を読んでいた亜希が小さくため息をつく。 「誠ってほんと子供ね。周りの人に迷惑だわ。」 それに対して誠は 「周りの人って言ったって運転手さんしかいないじゃん。それにこんな時くらいはしゃがなきゃ。」 「お前がはしゃいでない時あるのか?」 「抜き打ちテストの時くらいよねぇ。」 秀人と亜希が顔を見合わせて頷く。 確かにバスには他の乗客もなく、貸し切りのようなものだった。 しばらくは窓の外を見ていた誠だったが、暇になったらしくトランプを持ち出してきた。 「なぁ秀人、まだ時間かかるんだろ?遊ぼうぜ。亜希も。大富豪でもしよう。」 「確かに何もしないよりはマシだな。亜希もするか。」 そう問い掛けると亜希は読みかけの本を閉じ、顎に人差し指を当てて言った。 「どうせするなら何か賭けましょうよ。一番負けた人が現地へ着いてからの荷物持ちでどう?」 「まあ俺は負けないけどな。」 誠が腕組みをしながら自信満々に言う。そしてトランプが始まった。 結果は全敗で誠の負け。というのも村につくまではまだ時間はあったが、誠が諦めた。 「三人でカード交換ありは卑怯だ!」 「あんたがありって言い出したんでしょうが!」 亜希の一言に誠はしゅんとした。そんな時、秀人がある事に気付いた。 いつからいたのだろう。一人のお婆さんがバスに乗っていたのだ。 続いて亜希もそれに気付く。 「いつから…乗ってたんだろ…」 しかし誠はそれに即答する。 「ああ、トランプに夢中になっている間に乗ったんじゃない?なんだったら話かけてみるよ。」 そういって誠は席を立った。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加