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「うっひゃー。随分田舎だなぁ。猪とかいそう。」
揺られるバスの中、誠が窓にへばりつきながら景色を見渡していた。それを見て本を読んでいた亜希が小さくため息をつく。
「誠ってほんと子供ね。周りの人に迷惑だわ。」
それに対して誠は
「周りの人って言ったって運転手さんしかいないじゃん。それにこんな時くらいはしゃがなきゃ。」
「お前がはしゃいでない時あるのか?」
「抜き打ちテストの時くらいよねぇ。」
秀人と亜希が顔を見合わせて頷く。
確かにバスには他の乗客もなく、貸し切りのようなものだった。
しばらくは窓の外を見ていた誠だったが、暇になったらしくトランプを持ち出してきた。
「なぁ秀人、まだ時間かかるんだろ?遊ぼうぜ。亜希も。大富豪でもしよう。」
「確かに何もしないよりはマシだな。亜希もするか。」
そう問い掛けると亜希は読みかけの本を閉じ、顎に人差し指を当てて言った。
「どうせするなら何か賭けましょうよ。一番負けた人が現地へ着いてからの荷物持ちでどう?」
「まあ俺は負けないけどな。」
誠が腕組みをしながら自信満々に言う。そしてトランプが始まった。
結果は全敗で誠の負け。というのも村につくまではまだ時間はあったが、誠が諦めた。
「三人でカード交換ありは卑怯だ!」
「あんたがありって言い出したんでしょうが!」
亜希の一言に誠はしゅんとした。そんな時、秀人がある事に気付いた。
いつからいたのだろう。一人のお婆さんがバスに乗っていたのだ。
続いて亜希もそれに気付く。
「いつから…乗ってたんだろ…」
しかし誠はそれに即答する。
「ああ、トランプに夢中になっている間に乗ったんじゃない?なんだったら話かけてみるよ。」
そういって誠は席を立った。
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