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秀人がそれを制止しようとするが、誠はすでにお婆さんに話しかけていた。
「ねぇ?お婆さん、僕達お婆さんが乗ってきたの気付かなかったよ。どこまでいくの?」
相手がお婆さんでなければナンパと間違えてしまうような言葉だった。それを見て秀人は頭を抱えた。
「やっぱりあいつと出かけるのは不安だな。胃が痛くなりそうだ…」
「それは私も同感…」
亜希も秀人の言葉に頷く。昔から誠はそうだった。知らない人に平気で声をかけるし、気付いたら意気投合してたりと周りから見れば心配の種だった。
すると誠はにやにやしながら自分の席へと戻ってきた。両手にいっぱいの蜜柑を持って。
「蜜柑もらっちゃった!」
「もらっちゃった!じゃねーよ。お前もうちょっと大人しくできないのか?」
誠はまあいいじゃないかと笑顔で二人に蜜柑を手渡す。秀人はため息をつくしかなかった。
「あ、そうそう。あのお婆さん買い物に行ってて【なしね村】ってとこに帰る途中らしいんだけど…」
「【なしね村】なら俺達の目的地と一緒だ。確か漢字は無くなる音だったはず。」
「へえ…奇遇じゃない。」
それに対して秀人、
「このバスに乗るなら多分そこくらいしか行くところがないんじゃないかな。田舎だからキャンプ地といってもそこまで有名なところでもないしね。」
秀人の言葉に亜季は蜜柑をむしりながらなるほどと言った感じでうなずいた。
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