夏休み

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父親の話に二人はすっかりのめり込んでいた。やっぱり夏と言えば怖い話だろう。いつのまにか母親も洗い物を終えてリビングに来ていた。 父親は母親から差し出されたお茶を啜りながら話を続けた。 「その独楽は多分その社に奉られていた何かに供えてあった物だと思う。父さんはなんか嫌な予感がしたんだが、ついつい面白半分でそれを持ち帰ってしまったんだ。  んで帰ってきてから家の庭で友達と独楽で遊んでたんだが、そこはやっぱり子供でな。すぐに飽きてそのまま庭に独楽を放置したんだ。んでその夜…」 バチン! その瞬間、部屋の電気が消えた。突然の出来事に誠と秀人は辺りを見回すがそんなに早く闇に目が慣れるはずもなく二人は動く事が出来なかった。 「これで少しは雰囲気出たかしら?」 ふと声のした方向を振り向くと火をつけた蝋燭を持っている母親がいた。どうやら電気を消したのは母親らしい。話に夢中になりすぎて二人とも母親が立ち上がった事に気付かなかったようだ。 秀人の顔は安心と怒りが同時にきた微妙な顔になっていた。誠が横で少し笑っているのが余計に秀人の気に障った。 「あ~ちょっと父さんもびびったよ。話を戻すぞ。  その夜、俺は小便をするために布団から出てトイレに向かったんだ。実家のトイレは外にあった。いわゆるぼっとん便所だ。トイレで用をたして部屋に戻ろうとした時、音がしたんだ。 シュルシュル… て具合にな。音のする方向を見ると一人の同じ年くらいの着物を着た男の子がそこにいたんだ。  その男の子の目の前には山で拾ったあの独楽が月な明かりに照らされて、妖しく光りながら廻っていたんだ。そして男の子と目が合った。俺はその瞬間そいつが人間じゃないと思った。」 「なんで人間じゃないと分かったんだ?」 すかさず秀人が問い詰める。その横で誠もうんうんと頷く。 「目だよ!」 急に父親が大きな声を出したため二人はびくっとする。 「人間の目はもちろん知っているよな。白目の真ん中に丸い黒目があるのが普通だがそいつの目は白目の中に黒目が縦に三つあったんだ。爬虫類のようにな。父さんおしっこしといてよかったよ。」 普段、真面目な顔をしない父親が珍しく真面目な顔をしているためこの話は本当の話だと二人は認識した。背中が冷たい感覚が二人を襲った。
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