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父親は二人を見てやりすぎたかなと少し笑顔を作り、話を続けた。
「結局俺はびびって親父の部屋に泣きつきにいったよ。山での出来事も全部話すと、親父は引き攣った顔をして
「この部屋から出るな!」
と一言言い残して出ていったんだ。俺は親父の布団に包まって怯えていたよ。
親父が帰って来たのはそれから2時間くらい後だっかな。その後俺は親父にさんざん説教くらったけど結局そいつがなんなのか、独楽が何を意味していたのか教えてくれなかった。
親父も死んじまったし、今となっては知る方法もないけどな。ということで以上だ。」
話が終わった瞬間、母親がリビングの電気を点けた。少し緊張していたせいか誠はふうっと息を吐き出した。
「あ~結構怖かったよ、親父さん。迫力もあったし。」
父親は誠の言葉でとびっきりの笑顔を作った。
「そうか。他にも怖い話はあるぞ。モルグっていう…」
「誠、今日はキャンプの話で来たんだろ?」
「あ。そうだった。」
父親の話を遮り、秀人が口を出す。父親は少し寂しそうな顔をしたがすぐに笑顔になった。秀人がびびっている事に気付いたからだ。
「親父…何か言いたそうだな…」
秀人がそれを見てつっかかる。しかし父親は相変わらずにやにやしている。
「秀人がどうしてもって言うなら諦めるけどな~。んでキャンプってなんだ?」
すると誠。
「いや、秀人から聞いたんだけどおじいさんの持ってた山ってキャンプ場だったんでしょ?この夏休みにそこでキャンプできないかな~と思って。」
その瞬間、父親の顔から笑みが消えた。
「ど、どうしたの?親父さん?」
誠の言葉を聞いてはっとした父親は再び笑顔を作る。そして何事もなかったように話を戻した。
「いやなんでもない。二人で行くのか?」
「亜希も合わせて三人で行く予定だよ。」
「俺も行きたい!」
勢いよく手をあげた父親。すかさず頭を叩く母親。叩かれた頭を押さえながら父親は言う。
「痛いよ母さん。父さんも仲間に入れてほしいんだよ~」
「あら、じゃあ私も行こうかしら?」
「よし。おまえらだけで行ってこい!」
「あなた、今日はサンドバッグだからね♪」
「ごめんなさい!」
この夫婦のたわいもない絡みもいつもの事だった。
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