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5月8日 午前9時20分
成歩堂法律事務所
朝から憂鬱と成歩堂は感じていた。
「なんだ‥‥コレ?」
あまりにもくだらないと言いたげそうな顔で呟いた。
「知らないの? あの有名人の金餅 杉夜(かねもち すぎよ)だよ!」
そう言ったのは成歩堂の助手、綾里 真宵だった。
「いや、それくらいは知ってるよ。ぼくが聞きたいのはあのCMのコトでね」
「ああ。あれね。だってシンボルマークだもん」
「シンボルマーク?」
疑問に思ったのか、成歩堂は聞き返した。
「ね。はみちゃん!」
「そうですとも! なるほどくんは以外と常識はずれなのですね‥‥」
(春美ちゃんには言われたくないぞ‥‥)
真宵が呼びかけた少女、綾里 春美は成歩堂を小ばかにするかのように言った。
「で。そのシンボルマークって?」
成歩堂も気になるので、この際、小ばかにされたコトも気にせず、二人に聞く。
「ええっと。たしか、数年前までは貧乏だったけど、偶然に宝くじを当ててね」
そこで真宵は言葉を切る。そして、春美は言葉を継いだ。
「そこから出世街道まっしぐら!というコトらしいのですよ」
「ふーん‥‥それで。あの宝くじは?」
まだすっきりしない成歩堂は再度、聞いた。
「ああ。《人の夢と描いて儚い宝くじ》のコト? 金餅 杉夜さんがスポンサーしてる宝くじだけど」
「そこじゃなくて、宝くじの名前だよ! 人をバカにしすぎだろ!語呂も悪いし!」
成歩堂はトーンを高くして言ったが、真宵と春美はそんなコトは聞いていなかった。
「わたくし、宝くじを買ってみたいです!」
「おっ。いいね! それじゃ、なるほどくんに‥‥」
「人の話しを聞けよな! それで、なんでそこにぼくの名前が‥‥!」
そう声を張り上げた次の瞬間。デスクの上に置いてあった、成歩堂の携帯電話からバイブ音とともに、トノサマンの着信音が鳴り響いた。
――今思えば、そのバイブ音の振動を伝える音が、この先の暗雲を示してていたのかもしれない‥‥
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