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「貴方って、意外と泣き虫なのね」
「え?……………あ!?」
突然上から声が聞こえた。
僕は驚いて見上げると、フェンスの上に立つ少女の姿があった。
死怨だ。
だが、今回は着物では無く、ゴシック系の黒いワンピースを着ていた。
「き…昨日の………って!そんな場所に立つと危ないよ!!?」
「心配無用よ。ほら」
死怨は、一人慌てる僕を鬱陶しそうに見下ろすと、ポンっと後ろへ飛んだ。
「え!?」
そっちは屋上ではなく、グランドの方だ。
この校舎は五階建て。
落ちたら確実に死ぬ。
フェンスから飛び下りた死怨は、そのまま支えを失い地面へ落ち………
「うわぁ!!」
僕はあまりの恐ろしさに目を閉じ、耳を塞ぐ。
「……………馬鹿?」
「……………え?」
落ちて死んだはずの少女の声が、何故か上空から聞こえた。
僕は恐る恐る目を開き、上空を見上げる。
バサ…バサ…
少女は浮いていた。
背中から生えた大きな黒い翼をはためかせ…美しく、優雅に…だが圧倒的な威圧感を放ちながら、少女は上空から僕を見下ろしていた。
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