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「だから言ったでしょう?心配無用だって」
フフ…と、死怨は笑う。
「……………」
思考停止になりそうな頭をなんとか保とうとするが、あまりに現実離れした風景に、やっぱり僕は混乱してしまう。
死怨は僕の目の前にゆっくりと降り立つ。
地面に両足がつくと翼は鳥のように折り畳まれ、すぅ…と空気に溶けるように消えた。
―………あっ!
やっと思考力が戻って来た僕は、再び慌て出した。
「え…えっと………死怨…さんでしたっけ!?」
「私服でいる時は『死怨』ではなく、『紫音』って呼んで。紫に音と書いて『紫音』」
「これ私服なの!!!??」
「そうよ。悪い?」
反射的にツッコミを入れてしまった僕に、死怨…じゃなかった、紫音が鋭く睨みつけた。
「い…いえ…悪くないです」
―こ…こわ……………
ここは素直に彼女の意見に合わせた方が良い、と直感した僕は、一先ず喉まで来ていた言葉を必死で堪えた。
「で、では、紫音さん?こんな堂々と登場していいの?今頃周りは大騒ぎに…」
「大騒ぎ?何処が?」
「何処って……………………………あれ?」
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