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「だけど、君には悪いけど、僕は教室に行くよ」
「え!?どうして!!?」
うっすらと笑みを浮かべた僕に対して、水野は驚愕した。
「ここで保健室に行ったって、何も変わらないよ。どちらにしても、あいつらは『余裕ぶってんじゃねー』とか言って殴りかかって来るさ」
「う…………で、でも…………………」
僕の言葉に水野は言葉を濁らせた。
「僕をかばってくれてありがとう。嬉しかったよ」
「…………………」
悲しげな表情で僕を見る水野を残し、僕は彼女から背を向け階段を降り始めようとした………が、
「あ、忘れてた」
ふと言い残してた事を思い出し、再び足を止めた。
「いい?水野?君は僕より少し時間を置いて教室に戻るんだよ?君は僕を探し出すことが出来なかったんだ。だから、校舎を一通り回ったあと、諦めて教室に戻ってきたって事にするんだ。そうしたら、君は大野達から目を付けられなくて済むからね」
「い、嫌です!!!一緒に行きます!!!」
「僕も嫌なんだ。………殴られるのは僕一人で良い」
「っ………!!」
ふと見せた僕の苦しげな目を見て言葉を失った水野を置き、僕はその場を立ち去った。
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