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「それはそうと…どうするの?このままじゃ、彼女も巻き添えよ?」
クスクスと、死怨が笑う。
「え?」
「見て。彼の目を」
死織が指差す方向に僕は視線を移した。
「あの目は殺意よ。このままじゃ、貴方だけでなく、彼女まで殺されるわ」
「え………?」
そんなの絶対に駄目だ。
死ぬのは僕だけで十分なんだ。
「ど、どうしたら……………」
僕は考えた。
水野が助かる方法を。
「選びなさい」
「え?」
「貴方が私を選べば、彼女は助かるわよ」
死怨が口許の両端をあげ、不気味に笑う。
「彼を殺すの。そうすれば、彼女は助かるわ」
「で、でも………」
「あら、怖いの?地獄に堕ちる事が?でも、このままじゃ彼女も貴方と一緒に死んじゃうわよ?」
死怨の声が、まるで地獄へ誘うように僕の頭に響き渡る。
「…………」
僕は篠田を見た。
彼は、大野から少し離れた場所で、度々大野の表情を見ては怯えていた。
篠田も感じとっているのだろう。
大野がこれから何をしようとしているのかを。
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