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「っ!!!…はぁ…はぁ…」
激痛が走る腹部にゆっくりと手を伸ばし、傷の具合いを確かめる。
刺されたのは腹部の右下辺り。
心臓は反れたものの、傷が深く出血が多い。
傷口から手を離し、空を見る。
夕陽はもう沈み、辺りは少しずつ闇に呑み込まれようとしていた。
あぁ…僕はこれで死ぬんだ…
そう、僕はそう思った。
こんな死に掛けてる時なのに僕は呑気だなぁ…。と、心の中で笑いながら。
大野を見る。
彼は僕が突き飛ばした時に床で頭を強く打ったのか、気を失っていた。
水野を見た。
唇が紫色に変色してきている。
急がないと死んでしまうだろう。
なんとか水野だけでも…と体を動かそうとするが、何故か力が出ない。
「最期の…選択の時よ」
今までただ見ていた死怨が僕の側まで寄り、無表情に見下ろした。
「………水野を………助けてくれ」
「無理よ。私達は死に逝く者を助けることは出来ない。あの子もココで死ぬことになっているから」
「そ…そんな………」
「それに…今助けたところで間に合わない」
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