選択の日

12/18
前へ
/68ページ
次へ
「っ!!!…はぁ…はぁ…」 激痛が走る腹部にゆっくりと手を伸ばし、傷の具合いを確かめる。 刺されたのは腹部の右下辺り。 心臓は反れたものの、傷が深く出血が多い。 傷口から手を離し、空を見る。 夕陽はもう沈み、辺りは少しずつ闇に呑み込まれようとしていた。 あぁ…僕はこれで死ぬんだ… そう、僕はそう思った。 こんな死に掛けてる時なのに僕は呑気だなぁ…。と、心の中で笑いながら。 大野を見る。 彼は僕が突き飛ばした時に床で頭を強く打ったのか、気を失っていた。 水野を見た。 唇が紫色に変色してきている。 急がないと死んでしまうだろう。 なんとか水野だけでも…と体を動かそうとするが、何故か力が出ない。 「最期の…選択の時よ」 今までただ見ていた死怨が僕の側まで寄り、無表情に見下ろした。 「………水野を………助けてくれ」 「無理よ。私達は死に逝く者を助けることは出来ない。あの子もココで死ぬことになっているから」 「そ…そんな………」 「それに…今助けたところで間に合わない」
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加